臨床高濃度水素水飲用試験報告書(1)※一部省略REPORT

(本臨床研究実施者)特定非営利活動法人 日本医科学研究所
2015年10月26日 (作成者)松田秀則 医師

高濃度水素水摂取によるメタボリズム改善および脂質代謝
改善に対する影響についての考察(健常人)

I:目的

本臨床研究(以下、本試験という)は、「健常者」を対象に、高濃度水素水(以下、水素水という)摂取が、代謝改善と脂質代謝に与える影響を明らかにすること、および水素水摂取の安全性の再確認と、健康改善の可能性を探ることを目的とした。

II:試験方法

1.対象

試験対象は、20歳以上55歳未満の健常者とした(性別は問わない)。
本試験での健常者の定義は、メタボリック症候群の指摘を受けたことがなく、糖尿病、悪性腫瘍などの既往がない者で、かつスクリーニング時の血液検査で異常値を認めない者とした。
本試験での対象除外基準は、表1に該当する場合とした。

表1

2.試験使用飲料水

飲料水 Aは、水素水 300 mL。飲料水 Bは、水素を含まない対照水(水素水作製のために使用した水)300 mLとした。飲料水の形態はアルミパウチ充填方式とした。外観はどちらも同じパッケージで、外から内容物を判別できないようにした。飲料水Aおよび飲料水B、100mLあたりの栄養組成を表2に示す。

表2

3.試験方法

①試験期間:2015年2月18日~5月25日の間の内、12週間。
②試験デザイン:本試験は、プラセボ対照二重盲検試験とした。
③健常者の登録方式および割り付け方法
前述した健常者をスクリーニング後、本試験の試験計画書、摂食要件と摂食日記を付けることに同意する31名を選定し、水素水を摂取させる飲料水A群(水素水群)に21名、対照水を摂取させる飲料水 B群(プラセボ群)に10名を無作為に割り付けた。
④飲料水投与方法、投与量、投与期間
A群、B群とも、朝・昼・夕食前を目安に、1パック300mLずつ(1日3パック、合計900mL)を飲用摂取することとした。試験期間中は、摂取量と時間を記録させた。ただし、一度で300mLを飲めない場合は、摂取時間・量を日誌に記入することとした。温めたり、お茶やコーヒーで抽出したりせず、開封して30分以内にそのまま飲み口から飲用することとした。
飲用摂取期間は12週間とし、生活日誌への記録(健康問診)を併せて依頼した。記載項目は表3に示す。

表3

⑤検査内容および検査スケジュール(表4)
スクリーニング時(試験開始時)と試験開始12週間後の2回、バイタルおよび体型変化計測として、身長(自己申告)、体重、ウエストサイズ、体温(腋窩体温)、血圧(収縮期/拡張期)を測定し、身長と体重よりBMIを算出した。血液検査で、血糖、HbA1c、総コレステロール(T-Cho)、LDL、HDL、トリグリセリド(TG:中性脂肪)、総タンパク、アルブミン、GOT、GPT、γ-GTP、ビリルビン値、電解質(Na:ナトリウム、Cl:塩素、K:カリウム)、尿素窒素、クレアチニン、尿酸値を測定した。
検査に先立ち、被験者への注意事項として、検査前日は禁酒とし、21 時までに夕食を済ませ、その後は検査終了時まで絶食(水のみ可)とした。

表4

⑥計測結果統計処理
スクリーニング時と試験開始12週間後で、測定結果および健康問診結果を集計した。各項目について、T検定及び相関解析を行い、有意差を検討した。この際、有意水準P<0.05を統計学的に有意とみなした。

III:結果

試験参加者は、総数31名であった。飲料水B群参加者のうち、12週後の測定結果が不十分であった2名を、本試験から除外した。最終的に、12週まで試験を完了できたのは、飲料水A群(水素水群)21名、飲料水B群(プラセボ群)8名であった。

(バイタルおよび体型計測結果)(表5)
血圧、体温、体重、BMI、体脂肪、ウエストサイズの、スクリーニング時と試験開始12週後の測定値において、水素水群とプラセボ群の間に有意差は見られなかった。

表5

(血液検査結果)
前述項目すべての測定値において、スクリーニング時と試験開始12週間後で、水素水群とプラセボ群間の有意差は見られなかった。LDL、HDL、トリグリセリド、GOT、GPT、γ-GTP、尿素窒素、クレアチニン、尿酸値の、スクリーニング時と12週間後の検査値のまとめを表6に示す。

表6

(健康問診結果)
プラセボ群と比較し、水素水群では試験開始12週間後で、スクリーニング時と比べ、疲労感、便通、生理痛の頻度や程度において改善傾向が見られた(図1参照)。

図1

Ⅳ:考察

これまで、水素分子(以下、H2という)は、生体内でなんら反応することのない不活ガスと考えられていた。しかし、種々の抗老化物質や抗酸化物質の開発、発見に伴い、H2が毒性の高い活性酸素種/ラジカルを選択的に還元する抗酸化物質として、酸化ストレスから細胞を防御する効果を有していることが示された(1)。
H2を最も簡単に投与する方法は、H2を高濃度に溶解した水(高濃度水素水)を飲用摂取することである。摂取したH2は体内に取り込まれ、大半は呼気ガスとして体外に排出されるものの、H2は、拡散速度が非常に大きく、高分子の間を通り抜け、細孔、薄膜等を容易に透過でき、生体内では水溶性、脂溶性を問わず拡散することから、あらゆる臓器とそれを構成する細胞内まで素早く到達できるとされている(1)。
今回実施した健常人に対する試験では、12週間の水素水摂取で、バイタル、体型計測、血液検査結果などについては、プラセボ群と比較し、有意な改善は見られなかった。しかし、被験者が日常生活で感じる健康問診結果では、プラセボ群と比較し、水素水摂取12週間後で、疲労感、便通、生理痛の頻度や程度において一定の改善傾向が見られた。Nakaoら(2)は、水に金属マグネシウムを投入することで水素ガスを発生させ、メタボリックシンドローム予備群の被験者に8週間投与した結果、尿中のSOD活性増加とチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の低下が認められ、酸化ストレスが抑制されたとしている。酸化ストレスは多くの生活習慣病や老年病の原因であることが明らかにされており、今回の、水素水摂取群での健康状態改善についても、12週間の水素水摂取により酸化ストレスが減少した結果、ホルモンバランス、自律神経バランスが整ったことによる可能性がある。
また、GOT、GPT、γ-GTP、尿素窒素、クレアチニン値などの肝機能検査、腎機能検査で、検査基準値から逸脱するものが無かったことから、水素水長期摂取による副作用は、ほとんど無いものと考えられた。
今後は、メタボリック症候群予備群あるいは、すでにメタボリック症候群を指摘されている症例について、水素水摂取効果を明らかにしていきたい。

Ⅴ:結論

水素水は、通常の水と変わらず、安全な飲料水であり、継続摂取により、便通や生理痛改善など健康維持に役立つ可能性があると考えられた。
今後は、メタボリック症候群の被験者対して、水素水の有用性について検討していきたい。

Ⅵ:引用文献

  • 1) Ohsawa I, Ishikawa M, Takahashi K, Watanabe M, Nishimaki K,
    Yamagata K,Katsura K, Katayama Y, Asoh S, Ohta S. Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nat Med. 2007Jun;13(6):688-94.
  • 2) Nakao A, Kaczorowski DJ, Wang Y, Cardinal JS, Buchholz BM, Sugimoto
    R, Tobita K, Lee S, Toyoda Y, Billiar TR, McCurry KR. Amelioration of rat cardiac cold ischemia/reperfusion injury with inhaled hydrogen or carbon monoxide, or both. J Heart Lung Transplant. 2010 May;29(5):544-53.